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黒いiPodから始まった事件はどこへ向かうのか…。
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タカシの住んでいたマンションの前にパトカーが止めてあり、夜中だというのに人垣が出来ている。
マンションから刑事が出てきた。長身で色白、涼しげな顔をしている。何を見てきたのだろう、大きな目が納得がいかないとつぶやいている。
「おい、さくら」
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少しでも涼しいところを見つけようとさまよっている猫。深夜の道に人気はなく、聞こえてくるのは、暑い空気を街に充満させるエアコンの音。猫が恨めしげにエアコンを見つめる。ひげをピクリとさせて振り返ると、タカシがいる。
居酒屋から出てきたタカシとリョウ。リョウはケータイで時間を確認して、
「終電来ちゃうから、俺急ぐわ」
「ああ、俺は大学寄ってから帰るよ」
「ちぇ、いいよな、近くに住んでる奴は。じゃあな」
駆け出すリョウの後姿を見ながら、タカシは幸せそうに微笑んでいる。じっとりと汗がにじんでくる額を拭い、そっとiPodを取り出して口づけをし、大学へと歩を向けた。
全ての空気がまとわりついてくるかのような夏の暑い夜。そんな不快に満ちた夜でも、居酒屋の中はエアコンでキンキンに冷えている。奥の座敷では学生のグループが大騒ぎし、テーブル席では学生やサラリーマンが大騒ぎを横目に、時間つぶしの会話をつむぎだしている。そんなテーブル席に近所の大学の大学院生、タカシとリョウがいる。二人とも淀みの中にとけていくかのように、まったりと飲んでいる。いつもは教授や助教の悪口ばかり話しているタカシが、今日は他愛のない話に興じている。そんなタカシをリョウは不思議に感じていた。
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