個室のベッドで穏やかな顔をして眠っているスミレ。しかし、その姿はどこか儚かった。

「あんたたちに何の話をすれば、スミレが目を覚ますっていうんだ」
ベッドに起きているアキラはさくら刑事と徳川刑事に吐き出すように行った。
「スミレさんを撃ったのは別の人間だ。そいつを捕まえたい」
「それはあんたたちの仕事だ。スミレや俺には関係ない」
「君は警察は何もできないと思っているようだが、徳川さんは身を挺して君たちを守ろうとしたんだぞ」
ため息をつくアキラ。
「あの時、そのじいさんが余計なことをしなければ、あいつが銃を撃つ前に銃を蹴り飛ばせた」
「強がりを言うんじゃない」
「いや、彼の言うとおりだ。清君、私は君にどう詫びればよいのか分からない。だが、あの時はああするしかなかったんだ」
徳川は深々と頭を下げた。
「謝らなくていいよ。だけど、自分の命は大切にしな。死んだらもう誰も守れなくなる」
アキラが寂しげな目をしたその時、上から爆発音が轟いた。
「見てきます。徳さんはここにいてください」
さくらが部屋から飛び出した。

さくらは呆然としていた。最上階のフロアがほぼ全壊している。

「ええ、スミレはもういません。それは分かってます。でも、あなたにこの話をしたのはスミレと清君のためなのです。私にはそれが分かります」
リョウの言葉に考え込む春日。
「いったい何が見えるのですか？」
「私の話を信じてくれるのですか？」
「ええ。あなたが嘘を言う人だとは思えません」
「春日さんが犯罪心理学をこの大学で学んでいると聞いたときに、二つのビジョンが見えました。プロファイリングを語る春日さん。椅子に縛られて必死に考えている清君」
「警察は椅子に縛ったりしない」
「ええ、春日さんと清君が一緒にいるわけではありません。スミレと清君の話を進めるうちに、そのビジョンが不鮮明になってきました」
「どういうことでしょうか…」
「推測ですが、春日さんの清君に対する感情が変化したからだと思いました。だからあなたに真実を話しました。真実を知れば、もっと大きく変化すると思い」
春日が複雑な表情をする。
「今見えるのは三つのビジョンです。考え込んでいる春日さん、椅子に縛れながら不敵な笑みを浮かべている清君。そして…」
「そして…」
「スミレの穏やかな寝顔です」

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