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黒いiPodから始まった事件はどこへ向かうのか…。
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夜の山中のホテルに響く銃声と叫び声。大きなゴーグルをつけた迷彩服の男二人が殺戮を繰り広げている。二人は次の獲物を探してすれ違いながらハイタッチをする。
「俺は5人だ」
「ちぇ!俺は3人だ」
『デコイは後2体だ。まず、デコイに仕掛けさせるか』
『いや、慌てるな。ターゲットがこちらに来るのを待ち伏せよう』
『じゃあ、いろいろ仕掛けるか』
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満月が明るい山中のホテル。アキラはベッドで息を引き取った父親の笑顔をじっと見ている。響く銃撃の音。叫び声。アキラは廊下へ飛び出した。

小学校二年生のスミレが裸足で部屋から走り出してきた。華奢な体に長く美しい黒髪。白のワンピースは破れ、血が飛び散っている。恐怖にかられて走ってきたスミレをアキラが抱きとめた。
「しっかりしろ」
「お父さんが…お父さんが…」
「遅くなって悪かった。お前は俺が守る」
スミレが出てきた部屋から男が出てきた。迷彩のミリタリールックで肩にマシンガンを吊るし、サバイバルナイフを握り締めている。大きなゴーグルをつけていて、ゴーグルの向こうの目は見えない。スミレは声にならない悲鳴をあげて、アキラの後ろに隠れた。
「もう嫌なものは見なくていい。目を閉じてろ」
スミレは目を閉じようとはしない。
「目を閉じないのか?じゃあ、その目に焼き付けておけ。死なずにすむことを確信しろ」
男はサバイバルナイフをしまってマシンガンを構えた。
「子供まで殺せるだなんて!?」
男は甲高い笑い声をあげた。
「解せないな」
「何がですか?」
「スミレのファンのお前がどうして、スミレの事件を差し置いて、彼の小学生の頃の事件の方に興味を持ったんだ」
「スミレの事件のことは、山崎さんから聞きました」
「山崎って、あのロック研究会の?」
「そうです。彼は現場にいたんです」
「そうだったのか。で、あの事件は今回の事件に関係ないってことか」
「それは分かりません」
「彼が小学生の時の事件。あれも謎のままだ。旅行先での出来事だった。山中のホテルから銃の音や人の叫び声が聞こえるという知らせを聞いて、地元の人たちとホテルに行った。だが、全ては終わっていた。ホテルに泊まっていた人たちも銃を持って襲った奴等も死んでいた。彼だけが生き残っていた」
「彼だけですか!?女の子はいませんでしたか?」
さくらは首を横に振って言った、「生き残っていたのは彼だけだ。彼の父親も殺されていた。泣き叫ぶこともなく、ホテルから歩いて出てきた。俺が警察の人間だと知って、俺を睨みつけていたよ。泣かない彼を見て、俺は戸惑った。ひどく大人に見えたんだ。普通だったら、悲惨な出来事に精神的なダメージが大きすぎたんだと思うところなんだが、彼の精神にはこれっぽちも曇りがないとしか思えなかった。ただ、目が警察の無力さを軽蔑していた。婦人警官が彼に何があったのか聞いたんだが、彼は何も話さなかったそうだ」
アキラがにやりと微笑んで一歩踏み出す。清水の動きがぴたりと止まった。アキラの手足が清水の体にタッチしながら、清水の動き出しを押さえ込んでいる。あせる清水。右脚が自由になり下からの蹴りを繰り出すが、アキラはそこにいなかった。少し横に移動していたアキラは、足を軽く清水のヒップに当てた。ふわりと浮き上がる清水。アキラは清水を右手で叩き落して、後ろへ跳んだ。顔をゆがめて立ち上がる清水。
「お前の方が私よりも速いというのか」
「違う」
「まやかしか」
「そんなもの、あんたには通用しない」
「…」
「俺は訓練によって悪魔の力を手に入れた」
「悪魔!?ふざけたことを」
アキラが清水に向かってダッシュした。待ち受ける清水。アキラの右手の掌底が突き出される。コンタクトする前に清水はスウェーバックを始め、アキラは右手を引き始める。繰り出される清水の膝蹴り。アキラはその膝蹴りに膝蹴りを当てて加速する。浮き上がった清水に体当たりするアキラ。清水は壁に激突し、壁を背に落下して座り込んだまま動けない。
「悪魔か…なるほど」
「あんたなら分かると思ったよ」
アキラが右手を出す。清水はその手をはたいて立ち上がった。
「頼みとは何だ?」
「とびっきりクールな義手を作ってほしい」
「分かった。左手をなくすようなぼんくらに最高の義手をつくってやる。その代わりにお前が守っているものを教えろ」
「頼み?ふざけるな。よくこの部屋に来てくれたな。この部屋だったら、お前を殺しても誰にもばれない」
「俺を殺して何になる」
「問答無用!」
清水が蹴り上げた足に左手を出すアキラ。義手が吹っ飛ぶ。清水の蹴り上げた足のかかとがアキラの脳天に叩き落とされる。アキラは右腕で清水の脚をいなしなす。
「大怪我したとは聞いていたが、左手をなくしたのか。ざまあないな」
次々と蹴りを繰り出す清水。その速さは常軌を逸しており、アキラは防戦一方となっている。闘いながら二人は話した。
「殺すと言ったのは本気だ」
「なぜ、俺を殺す」
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