聖都大学の一室。大学教授の松田が机に向かって座っている。教授としてはまだ若いその顔は憤りに歪んでいる。ノックとともに、若い男がやけに楽しそうに入ってくる。
「どうしたんですか?松田教授」
男は松田が座っている机の前までずかずかと歩いていき、机に両手をついて、松田の顔を見る。
「見なさい」
松田は机の上にのっていた少年の数学の答案用紙を男の方に向きを変えて差し出す。
「CBTですね。95点か。飛び入学したいなら、100点ぐらいとれよ。これが何か?」
松田が、『醜悪』という文字を指差す。
「ああ、ここ全然分からなかったのか。『醜悪』ってできなかった自分のことですかね」