「分かった。君もなかなか向上心が高いようだ。CBTを受けさせてあげるよ。ついてきなさい」
男性職員は少年を近くのパソコンの所へ連れて行った。
「今、セッティングするから、少し待ってなさい」
男性職員がログインして、CBTソフトを立ち上げる。
「じゃあ、座って」
少年は座って、マシンガンのような速さでキーを叩いていく。
「ちょ、ちょ、ちょっと待ちなさい。説明がまだだ」

「説明なんて、いいよ。自分の情報を入れて、四択の問題を解いていくだけだよね」
男性職員は呆れた顔をする。
「メモ用紙とシャーペンを貸すから、計算にはこれを使いなさい。机の上には他に何も置かないように。それから、携帯電話を出しなさい」
「持ってない」
「スマートフォンもダメだ」
「だから、そんなもの持ってないって」
少年は入力を終え、物理のテストを始める。
「1時間たったら、自動的にテストは終了するから」
「そんなにかかんないよ」
男性職員は首をすくめて、自分の席に戻り、時々少年を見ながら本を読み始める。20分程すると、男性職員の横の机のプリンターが動き出した。男性職員は苦笑しながら印刷された物理の解答用紙を見る。満点の解答用紙に男性職員の血の気が引いて行った。
「な、なんなんだ」
男性職員は慌てて少年の斜め後ろに立って、少年を見守り始める。少年はすでに数学のテストを始めていた。メモ帳もシャーペンも男性職員が置いたままで、触れた形跡もない。少年は問題をじっくりと眺めて、回答をインプットしていく。少年の目はディスプレイから離れず、カンニングをしている様子はない。少年は一度だけ、ディスプレイの前で中指を上に突き立てた。物理の解答用紙が印刷されてから、やはり20分程してプリンターが動き出した。
「終わった。どうすればいいの？」
「こっちに来なさい」
男性職員は少年を受付に連れて行き、カウンターの上に解答用紙2枚を置いた。
「君、すごいな。物理は満点。数学も95点だ。署名欄にサインして」
少年は、男性職員からボールペンを受け取ってサインする。そして、数学の解答が印刷されていない並んだ5つの欄に大きく「醜悪」と書いた。
「それは？」
「問題つくった人に見せれば分かるよ。ルータが手に入ったら持ってくるから、名刺」
「あ、ああ、頼むよ」
男性職員は慌てて名刺を少年に渡す。少年は名刺をポケットに入れて出口へ向かう。
「入試課から連絡行くから、本試験頑張れよ！」
少年は振り返らずに拳を上げて応えた。

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