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黒いiPodから始まった事件はどこへ向かうのか…。
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聖都大学の飛び入学試験室。入室する試験監督たち。その後からすっと入って席についたアキラ。他の受験生は皆すでに席についている。アキラの後の席の大場が小声でアキラに話しかける。
「派手なことしてくれたな。お前の得意が物理だってことは分かったよ。俺には物理なんかどうでもいいんだ。俺は数学の天才だからな」
「そこ、静かにしなさい」
机に伏せるアキラ。試験監督から物理の試験の時と同様の注意事項が述べられ、問題用紙、答案用紙、小冊子が配られる。試験監督の一人、山崎がアキラの席の小冊子をじっと見つめている。
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聖都大学の飛び入学試験は前期入学試験と同時に行われ、同じ問題が使われる。ただし、飛び入学試験の科目は二日目の物理と数学のみ。午前、二時間の物理の試験が行われている。静寂の中、解答を書く鉛筆の音がゆるやかに流れる。開始三十分。すっと手が上がる。手を上げたのがアキラと分かり、山崎助教が行こうとしたが、近くを見回っていた重盛助教がアキラの斜め前にしゃがみ、小さな声で話す。
「どうしました?」
「できた。出ていい?」
「開始後一時間は退室できません」
「分かった」
アキラは机に伏せてしまう。アキラの後の席の大場が、そんなアキラをバカにしたような目で見る。
聖都大学前期入学試験当日。受験生たちが次々と門を入っていく、CBTのときの男性職員が門の脇でキョロキョロとしている。男性職員の顔がパッと明るくなる。あの時の少年を見つけて、駆け寄った。
「私だよ。覚えてるかい?」
「ああ、あの時の」
「ありがとう。君のおかげで勉強がはかどってるよ」
「おじさんにやる気があるからだよ。きっと試験通るよ」
少年が門を入っていく。
「頑張れよ!絶対、合格しろよ!」
少年は拳を天に突き上げる。男性職員は少年が受験生の波に飲み込まれた後もしばらくじっと見送り、門を背にしてゆっくりと歩き出した。
「あいつなら大丈夫。俺も頑張るぞ」
聖都大学の一室。大学教授の松田が机に向かって座っている。教授としてはまだ若いその顔は憤りに歪んでいる。ノックとともに、若い男がやけに楽しそうに入ってくる。
「どうしたんですか?松田教授」
男は松田が座っている机の前までずかずかと歩いていき、机に両手をついて、松田の顔を見る。
「見なさい」
松田は机の上にのっていた少年の数学の答案用紙を男の方に向きを変えて差し出す。
「CBTですね。95点か。飛び入学したいなら、100点ぐらいとれよ。これが何か?」
松田が、『醜悪』という文字を指差す。
「ああ、ここ全然分からなかったのか。『醜悪』ってできなかった自分のことですかね」
「分かった。君もなかなか向上心が高いようだ。CBTを受けさせてあげるよ。ついてきなさい」
男性職員は少年を近くのパソコンの所へ連れて行った。
「今、セッティングするから、少し待ってなさい」
男性職員がログインして、CBTソフトを立ち上げる。
「じゃあ、座って」
少年は座って、マシンガンのような速さでキーを叩いていく。
「ちょ、ちょ、ちょっと待ちなさい。説明がまだだ」
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