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黒いiPodから始まった事件はどこへ向かうのか…。
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「いいですよ」
さくらはツヨシにそう答えると、いらいらしている春日を尻目に、研究室をゆっくりと見回し始めた。
「お一人でおられることが多いんですか?」
ツヨシがさくらをじろっとにらみつける。

+ + + + + + + + + +
「ああ、すいません。メール読まれてるんでしたね」
ツヨシはメールを読みながら、眉間にしわを寄せ、親指をかみ始めた。さくらはそんなツヨシの様子を興味深げに見ている。
ツヨシはぼそぼそと独り言をもらす。
「何だよ…何か関係あんのかよ…どっかから見てるのか…」
ツヨシはさくらの視線に気づき、二人の目が合う。さくらはにっこりと笑いかける。ツヨシは携帯をしまい、
「いいですよ、話の続き」
さくらは、春日の背中を任せたと軽く叩き、再び部屋を見回し始める。
「昨日の夜、ここで遠藤さんに合われたんですね」
「合ったって言うか、タカシがここに少し寄っただけですよ」
「遠藤さんと何か話をされましたか?」
「別に」
「遠藤さんは、何をしにここに寄られたのでしょうか?」
「机の掃除みたいでしたよ」
「机の掃除?」
「なんだか、机の上のものを動かす音がしたから」
「見てはいないのですか?」
「俺、ソファーに座ってたから」
「遠藤さんの机は?」
「そこ、そこの机だよ」
机の上のものは、乱雑に横に寄せられており、メモパッドとボールペンだけが真ん中にぽつんと置かれていた。
「おい、春日、こっち来い」
いつの間にか部屋の隅のほうに行っていたさくらが春日を呼んだ。
「はい、なんでしょうか」
さくらは声を潜めて、
「あれ、見えるか?」
「何ですか?」
「マックのハッピーセットのおもちゃ」
「え、ええ、見えますけど」
「ここから、あれを見張っててくれ」
「あれですか!?」
「声が大きい。そう、あれ。動いたら教えてくれ」
「動くんですか!?」
さくらは、春日にウインクして、遠藤タカシの机に向かった。
「いつも遅くまでここにおられるんですか?」
「ほとんど泊まり。この研究室でまじめに研究してるの俺だけだから」
「すごいですね。草刈さんはこの研究室のエースなんだ」
「まあね」
「遠藤さんに変わったところありませんでしたか?」
「酔ってたみたいですよ」
「合コンですか?」
「友達と飲んだんじゃないですか」
「友達っていうと」
さくらが聞こうとするのをさえぎり、
「俺、知りませんよ。タカシと親しいわけじゃないから」
「これは失礼」
さくらは机の上のメモパッドのはしっこに小さく『酔ってた』と書き、
「しまった。書いちゃったよ。ごめんなさいね、勝手に書いちゃって」
さくらは書いてしまったメモを取り、ポケットにつっこんだ。
「じゃあ、これで失礼します。行くぞ、春日」
「さくらさん、動きませんよ」
さくらは、一瞬何を言っているのか分からないというような顔をするが、すぐに苦笑しながら、
「そうか、動かなかったか。よくやった。行くぞ」
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