聖都大学。『飛び入学面接控え室』と書かれた紙が張ってあるドアの前に立つアキラ。そのドアを開けて中に入ると、クイズチャンピオンの岡部がいた。
「もう一人は君か。面接は二人だけだってさ」
アキラは岡部の話に全く興味を示さず、壁際に立つ。
「物理の試験すごかったね。あんなに早く終わるなんて。満点？それとも、解けない問題は諦めたのかな？」
アキラは何も言わず、岡部をじっと見ている。
「愚問だったね。でも、あれで大場が君に対抗して数学をミスったんだと思うよ。あいつは嫌な奴だけど、本物の数学の天才だ。全国模試では常にトップ。あいつがこの場にいても不思議じゃない」
ドアが開き、岡部が呼ばれた。
「君は本物の天才だよ」
「俺は天才じゃない」
「この僕より努力したって言うのかい？」
岡部は「馬鹿にするな」と言わんばかりの勢いでアキラを睨みつける。静かに見返しているアキラの目を見て、岡部は何故だか恐怖にかられ、部屋を飛び出した。

会議室用の長机が横に並べられ、教授達が座っている。松田と森本もその中におり、二人の顔は期待に輝いていた。ドアが開き、アキラが入ってきた。松田は立ち上がって、アキラのところまで行くと、アキラの右手を両手で握って握手した。
「待ってたよ。CBTの時は、うちの助教が失礼な問題を出して申し訳なかった」
「助教って、試験の時にいた人？」
「そう、山崎君だ。私の問題はどうだった？」
アキラの顔がパッと明るくなった。
「あの問題、あんたが作ったんだ。あれは、素晴らしかった。俺にとって、新しい世界への扉だったよ」
「そう言ってくれると嬉しいよ。君の解答に興味を示している人がいる。面接が終わったら詳しく話そう」
「松田先生、いい加減にしてください。これは、面接ですよ」
神経質を絵にかいたような顔をした水谷が怒りの声を上げた。
「数学・物理ともに満点なんだし、うちの研究室に入ってもらうから面接なんていいじゃないですか」
「言ったはずです。面接は面接として行うと。従えないなら、退席してください」
「じゃあ、うちに来てもらおうかな」
森本が松田にウインクする。松田は苦笑して席に戻る。
「名前を」
「清アキラ」
「座りなさい」
「立っててもいい？」
「聖都大学に入りたいのなら、座りなさい」
面接室の中を緊張感が走る。耐えきれずに水谷が口を開こうとした時、アキラが椅子にスッと座った。すぐに立てるように浅く腰かけ、両手は膝に置き、背筋はまっすぐに伸びていた。その姿は美しく、教授達から感嘆のため息が漏れた。

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