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黒いiPodから始まった事件はどこへ向かうのか…。
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「だ、誰なんだ、君は!?」
伊田は、声に鳴らない声を出しながら後ずさった。徳川が扉を大きく開き、
「よう、さくら。おいちゃんは元気か?」
「やめてくださいよ。徳さん」

+ + + + + + + + + +
さくらは隣の部屋から出てきて、伊田の前に立ち、
「聖都署のさくらと言います。驚かせてしまって申し訳ありません」
伊田が徳川を見ると、徳川は笑みを浮かべてうなずいた。伊田はほっとして全身から力が抜けていくようだった。
「先生は、部屋に監視カメラとか置いてますか?」
「いいえ。置いてないのが悪いと言うんですか」
「そんなことはないですよ。ちょっと待ってください」
さくらは部屋の隅に行くと、棚から手の平に収まる小さな箱状のものを持ってきた。
「では、これは先生のものじゃないですね」
さくらは箱状のもののレンズ部分を伊田のほうに向けた。
「え、ええ。そんなもの知りませんよ。わ、私は…」
徳川が伊田の肩を優しく叩いて、
「先生は被害者なんですよ」
「一体何が何だか…」
「署に持って行きますね」
「ええ、どうぞ」
さくらは箱状のものをビニール袋に入れて春日に渡す。
「ちょっと待ってろ」
さくらはパイプ椅子を持って書架の方へ行くと、パイプ椅子に乗って書架の上から先ほどと同じ小さな箱状のものを取り上げた。
「春日、これもだ」
春日はビニール袋を広げ、さくらがその中に小さな箱状のものを入れた。さくらはパイプ椅子を元に戻し、手袋を外して、伊田の前に立った。
「先生、ちょっとよろしいですか」
「はい」
「隣の部屋、窓が壊れてて簡単に入れますよ」
「そ、そんな馬鹿な」
伊田は隣の部屋にせかせかと入っていき、開いている窓を見て愕然とした。さくらはその後ろに立ち、
「窓がある部屋を薬品の倉庫にしてはいけないんじゃないですか」
振り返った伊田は、口をパクパクさせている。
「薬品がなくなっていないかご確認願います」
「やっておきます」
「今すぐです」
伊田は肩を落としたまま、棚へと向かう。
「徳さん、あとお願いしていいですか?」
「人使いが荒いな」
「十分楽しんだんじゃないですか」
さくらはにやりとして春日を見た。
「まあな」
「事件の日、遠藤タカシと一緒に飲んでいた学生が分かった。サークル仲間だ。行くぞ」
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