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黒いiPodから始まった事件はどこへ向かうのか…。
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外があまりにも暑いために、学食は涼をとる学生たちでにぎわっている。食事をしている学生はいないが、他愛もない会話をしている学生たち、本を読んでいる学生、パソコンをしている学生…その中に徳川がいた。徳川の前のトレーには空になったコーヒーカップがおかれている。砂糖とミルクをたくさん入れたらしく、スティックシュガーの紙袋やミルクの容器がトレーの端に塊としてまとめられていた。徳川はパソコンをしている学生の方をちらちら見ていた。

+ + + + + + + + + +
学食の入り口にさくらと春日がやってきた。春日は徳川を見つけると、回りも気にせず「徳さーん」と大きな声で呼びながら、小走りにやってきた。学生たちの目が春日と徳川に集まる。徳川は「しまった」という顔をしながら、パソコンをやっていた学生に背を向けるようにトレーを持ってそっと立ち上がった。学生たちは徳川たちから関心をなくして視線を戻している中、パソコンをやっていた学生だけは徳川の背中をじっと見ている。
徳川の渋い顔に、春日は黙り込んでしまう。さくらは徳川の目が何かを伝えようとしているのに気がついた。そして、徳川の後ろから矢を射るような目が自分にまっすぐ向けられていることを知った。徳川は「やれやれ」という顔をして、さくらの肩をとんと叩いて「いくぞ」と告げたが、さくらは徳川をやり過ごし、学生の傍らへと寄った。
「アキラ君、お久しぶり」
「何でここにいるんだ」
「仕事だよ。ちょっとした事件が起きてね」
「誰か死んじゃったんだ。次に誰かが死ぬのを待ってるの?」
さくらは何も答えられず、うなだれている。
「警察なんて、死んだり傷ついたりした後でなきゃ何もできないんだろ。あんたたちにできるのは犯罪者を捕まえることだけだ。市民を守ることなんてできやしない。役立たずだよ」
「な、なんだとー」
アキラにくってかかろうとする春日を徳川が押しとどめる。
「なんだ、あんたの新しいワンちゃん?ちゃんとしつけないと誰にでも噛み付くようになっちゃうよ」
何か言おうとする春日の胸倉を徳川が締め上げる。
「後輩のことは悪く言わないでくれ」
さくらが顔を上げると、アキラの目は涙であふれている。アキラはさくらから目を背ける。
「君には本当にすまないことをしたと思っている。だが、君まで巻き込みたくなかったんだ」
「俺は死んでもよかったんだ」
「君の気持ちは分かってる」
あきらはゆっくりと首を横に振ってサクラの言葉を否定した。
「出てってくれ」
「さくら、いくぞ」
「おい、じじい」
「なんだ、坊主」
「まだ生きてるのか」
「大事にしてるのさ。お前にもらった命だからな」
「さっさと、くたばっちまいな」
「そのうちな。ほら、いくぞ、さくら」
アキラはさくらたちの方を見ようともしない。
さくらたちが学食を出ようとしたとき、目の前に大男が現れる。
「あ、あのときのおじさん、体調はどう?」
「君か。ありがとう。大丈夫だよ」
「そりゃ、よかった」
さくらが大男に女からもらった赤いもののことを聞こうとしたとき、
「おーい、アキラ!」
大男はアキラのところへ走り去ってしまった。
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