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黒いiPodから始まった事件はどこへ向かうのか…。
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走ってきた徳川は、伊田教授の部屋がある北2号館の入り口の前で立ち止まり、入り口横の壁に背中を付けて中を伺っている。後から走ってきた春日はどうしてよいのか分からず、徳川の後ろで身を隠すようにしながら、
「あ、あの…」
「なんだ?」
「どうしてこの建物だということが分かったのですか?」

+ + + + + + + + + +
「刑事の勘だ」
す、すごい…さすがベテラン刑事。
「トゥース」
「はい」
「なんで俺にくっついてんだ。反対側に行け」
「はい」
「俺が先に行く。お前は後ろを警戒しながら俺について来い」
徳川は入り口を回り込み、壁に背を寄せながら、息を潜めてゆっくりと進んでいく。春日も廊下の反対側の壁伝いにゆっくり進みながら、後ろを何度も振り返って異常がないか確認する。額をゆっくりと汗が伝う。徳川が動きを止めた。春日も息を止めてじっとする。徳川はすっと立ち上がると、普通に歩き出した。10メートルぐらい前の扉が開き、二人の女の学生が楽しげに話しながら廊下に現れた。春日は額に汗を浮かべて壁に張り付いたまま動くことが出来なかった。笑っていた二人は、春日を見ると、出来るだけ離れて小走りに通り過ぎ、「やだー」「気持ち悪ーい」とささやきながら去っていった。
「トゥース!行くぞ!」
「はい」
あー、恥ずかしい。なんだったんだ。ジョーク?徳川さんって、相当変わってるな。さくらさんも一緒かも…。そういえば、隠しカメラって言ってたけど、全くの嘘なんじゃ…。二人とも刑事の仕事をなんだと思ってんだ!春日は次第に怒りを覚えていった。徳川が立ち止まって、扉を眺める。
「ここか…」
春日は徳川に一矢報いようとして、意地悪な笑みを浮かべながら、
「さくらさんが言ってましたけど、隠しカメラがそこいら中にあるかもしれませんよ」
「ぼんくら刑事の勘違いだろ。気にするな」
徳川に睨まれて、その迫力に春日は背筋がぞっとした。徳川の目は怒気を含み、『要らないことを言うんじゃない』と伝えていた。春日は、なんだか恥ずかしくなってしまい、顔が熱を帯びてきた。涙もこみ上げてくる。涙で少しぼやけた目で徳川を見ると、徳川は仏のように穏やかな顔をして扉のほうを向いていた。徳川は軽くノックしながら、
「すいません。先ほど守衛所から電話したものです」
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